「早稲田大学創立125周年記念シンポジウム:角田柳作—日米の架け橋となった“Sensei”—」開催報告
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「角田柳作が語りかけるもの」(13)
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パネルディスカッション
内海孝(東京外国語大学教授) 内海孝(東京外国語大学教授):ありがとうございます。先ほどお昼休みに質問などを回収したのですが、先ほど先生は、全然日本語を知らない人にも『徒然草』を美しいだろう、といいながら暗誦したということで、それは特にこういうフレーズだったというものはあるのでしょうか。
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ドナルド・キーン(コロンビア大学名誉教授) ドナルド・キーン(コロンビア大学名誉教授):私は年を取って暗記力が随分衰えてきたのですが、大体こういうことです。兼好法師は、ものはいつまでもないから貴重だと。それはギリシャ哲学と正反対です。ギリシャではものがダメになるから死ぬまで幸福だったと言えないです。つまり、運が悪くなることもありうるとか。しかし、兼好法師はそういう不安と変わりやすいものがあるから人間の生活に面白みがあって、貴重であると書きました。私が美しいと思ったのは音でした。私は日本文学を長く勉強して、日本の専門家の研究に大いに世話になりました。私の以前に専門家がいなかったら今のようにできなかったと思います。

1つだけ、大抵の日本の専門家が無視することは、文学作品の音です。音声的な面です。私はいつか専門的な俳人、弟子の多い俳人にそういう話をしたら、大変驚いていました。彼は意味や余韻を考えていました。そういうことを非常に重要に思っていましたが、しかし俳句の音にどういうものがあるかはまったく考えていませんでした。どういうわけかわかりませんが、もし日本語がローマ字で書かれたものだったらもっと音に敏感だろうと思います。

変な話をしましょう。名古屋と神戸との間に高速道路ができたときに名神道路という名前にしました。外国人は名前を聞いて皆噴出しました。日本人は1人も噴出さないです。つまり、日本人は「名神」が名古屋の名と神戸の神とわかり、外国人は「迷信」というと13日ごとに黒い猫が出るとか、お化けがでるとか、そういう迷信の道路だと思って大変楽しく思います。しかし、日本人でそれを感じた人を私は知りません。あるいは、長崎に親和銀行があります。「神話」銀行なんてすばらしい。神話にあるような銀行、壁からお金が出るようだ。しかし、そういう場合は外国人の日本文学者として少し貢献できました。
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和田敦彦(早稲田大学准教授) 和田敦彦(早稲田大学准教授):またそれで少し伺いたいことがあります。せっかくですので角田修さんにお伺いたいのですが。先ほど角田柳作自身が書き残したものが少ないというときに、今回展示のほうでも出ていましたが、いくつかノートが、あの存在自体も非常に面白いものだと思いますが、そういう意味ではもちろん、内海先生を除いて角田柳作のものをもっともたくさんいろいろ読んでいるのはやはり角田修さんだと思います。例えば読んでいて、角田柳作の書いているものの特徴、あるいは気になっていることがもしおありでしたら、その経験の中から何でも気が付いたことなどを伺えたら、と思うのですが。

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