「早稲田大学創立125周年記念シンポジウム:角田柳作—日米の架け橋となった“Sensei”—」開催報告
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角田先生と私(9) 010203040506070809
ドナルド・キーン コロンビア大学名誉教授

先生は長くアメリカで生活して、友達や弟子が多かったですが、最後の病気にかかったときに日本に帰ることに決めました。それ以前も自分はアメリカ人になったと考えたことは一度もないでしょう。永井道雄さんご夫妻が先生のお宅へ晩御飯に呼ばれたときに、先生は、旅先ですからおいしくできません、とお詫びしました。長い旅でした。しかし、先生の奥様が亡くなった後、また子どもたちが大きくなってからでも先生は1人で生活したことは若さの秘訣だったかもしれません。私は一度、神戸に住んでおられた先生のお嬢さんのお宅を訪ねたときに、先生は何も面倒なことをしなくてもよかったために、たちまち老人になったと思いました。

先生が亡くなった後でも、私はまだ指導を受けている感じがしました。私の授業は角田先生と同じく『奥の細道』、謡曲『松風』、『方丈記』、『徒然草』も何回も教えたことがあります。日本の思想をあまり教えたことはありませんが、日本史の西洋発見をはじめ、文学とあまり関係のない日本研究を数冊書いたことがあって、今年会沢正志斎の論文を英訳して発表しました。先生に見せられないことを大変残念に思います。

すばらしい先生に恵まれたことは、生涯の幸せだと思います。私はそのために自分の生涯の仕事が決まりました。もしほかの先生だったら、ごく普通のことを教える先生だったら、どんなに詳しくても、どんなに私はその先生に詳しくても、同じようなことはなかったでしょう。私は角田先生に深く感謝しています。いつもそうです。十分感謝できないということをいつも鋭く感じています。ありがとうございました。

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宗像和重(早稲田大学図書館副館長):キーン先生、長時間にわたって角田柳作先生の人柄が生き生きと蘇ってくるような感慨深いお話をいただき、誠にありがとうございました。皆様、どうぞもう一度キーン先生に拍手をお願いします。ありがとうございます。ここで、午前の部を閉会するにあたり、もう1人皆様にご紹介させていただきます。ただ今キーン先生のお話の中にも角田先生のご家族の話が出てきましたが、本日、この会に角田柳作先生のご息女で四女にあたられる星野冨士子様がお見えになっておられます。高いところから大変失礼ではありますが、皆様にご紹介申し上げます。恐れ入りますが、お立ちいただけますでしょうか。どうもありがとうございました。大変興味深い、感慨深いお話の中で、この午前の講演会をお開きにすることができました。それでは、これをもちまして本日の午前の部の基調講演をお開きにさせていただきます。午後は1時半より再開しまして、コロンビア大学と縁の深い方々のビデオによるインタビュー、またドナルド・キーン先生をはじめとする先生方によるシンポジウムも予定しています。長時間にわたりますが、ぜひ引き続きご参加いただきますようにお願いします。本日はどうもありがとうございました。


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