21波留麻和解 一名江戸ハルマ 文庫8 A209 重要文化財
稲村三伯編 寛政8(1796) 13冊

『波留麻和解』の写本。大槻家旧蔵の橙色表紙本である。巻頭に大槻玄沢(磐水)の序と宇田川玄真の書いた凡例が貼付されている。従来一般的に「稿本」の名で呼ばれてきたものであるが,刊本をこ採用された訳語あるいはそれに近い訳語がこの写本でも一番右の欄に記され,その左側に別の訳語が書かれているものが多いこと,刊本の訳語にあたるものを抹消して新しい訳語を書き加えたと思われるものも散見すること,刊本では未詳とされるオランダ語に写本では訳語を与えられている場合があることなど,さらに,刊本成立よりも後に完成した『ドーフ・ハルマ』の訳によった部分があることも指摘されている。

22長崎ハルマ ホ10 1749
Hendrik Doeff編 坪井信道写 8冊

長崎のオランダ商館長ヘンデレキ・ドゥーフ(1777−1835)が通詞の吉雄権之助らの助力を得て文化13年(1816)に完成し、幕府に献上した蘭和辞書。本書は、 幕末の蘭学者坪井信道の家に伝えられた写本である。

23光太夫と魯人蝦夷ネモロ滞居之図
隆啓模 寛政5(1793) 紙本彩色 1巻 リ5 9317

ロシアに漂着し、数奇な生涯を送った伊勢白子浦神昌丸の船頭大黒屋光太夫(1751-1828)がロシア使節ラクスマンとともに根室に到着した際の様子。松前藩士から借覧して模写されたものという。

24大黒屋光太夫将来露国教科書 KA 1701

大黒屋光太夫がロシアから持ち帰ったもので、エカテリナ2世の勅令により刊行された18世紀学制改革期の国民学校(小学校)用の算数の教科書である。

25北槎聞略付録図 文庫8 J21
桂川国瑞撰 寛政6(1794) 紙本彩色 2巻

光太夫のロシアにおける見聞を桂川国瑞(1751-1809)が記録し、オランダ書の世界地誌により補訂して体系的に編集した『北槎聞略』は当時のロシア事情のすぐれた紹介の書であった。本書はそれに付された図である。

27桂川国瑞麝獣図 文庫8 C910
宇田川玄随賛 天明3(1783) 紙本 1軸

フランスの薬学者ニコラ・レムリー(1645-1715)の『薬物辞典』のオランダ語版から、麝香鹿(じゃこうじか)の図を桂川国瑞が模し、宇田川玄随が賛を付している。

29野取図帳 三浦半島一部 ル11 843
伊能忠敬自筆 1冊

享和元年(1801)、3月3日から、幕命により、伊豆より東海岸沿いに北上し、陸奥までの実地測量をおこなった際、忠敬がつけていたフィールドノート。

30万国輿地全図 文庫8 C13
松原右仲画 天保9(1838)大槻磐渓識語 銅版 1帖

ロシア使節レザノフのもたらした世界地図をもとに製作された銅版世界地図。ロシア語のままになっている 地名もある。作者の松原右仲は備中松山藩の儒者であるが、蘭学も学び、とくに銅版では知られていたらしく、相撲見立番付(18)で司馬江漢と同じ前頭三枚目にいる。