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本文・梗概

源氏物語 五十四巻
江戸中期写
文庫30 A0325

縦わずか9cmほどの極小の巻子本に源氏物語の全巻が同筆、すなわち一人の手によって書写されている。『源氏物語』が富貴な人々の嫁入り道具、雛道具とされたことは多いが、このような小さな巻物に仕立てた例は少なく、『源氏物語』が人々にどのように読まれ、愛されてきたのかを考えるうえでも貴重な資料である。

源氏物語 五十四冊 伝三条西実枝筆
室町末期写
ヘ02 04867(51)

菊花文様、八つ抽き出しの蒔絵匣に収められた豪華本。表紙は金茶地緞子に桜花紋様で、中央の題簽には金泥をひいた紙を用いる。本文はいわゆる青表紙本系統。三条西家旧蔵本で、三条西実枝の筆と伝えられる写本である。三条西家は代々歌道に通じ、古今伝授にも深くかかわった。古典研究への貢献も大きく、後世の研究者に大きな影響を与えている。

源氏物語 桐壺巻断簡 二葉
伝一条兼良筆
へ12 05092,05093

いずれも約縦26cm×横19cmほどの断簡。一方の裏面には古筆家「琴山」の極札(きわめふだ)を貼付す。桐壺更衣を失い悲嘆にくれる帝が、母君(源氏の祖母)とともにある源氏を思う場面(右)と、源氏の元服の場面(左)である。

源氏物語 桐壺巻断簡(伊予切) 一葉
伝今川了俊筆
ヘ12 05110

縦26.7cm×横11.1cm。楮紙。古筆家五代、古筆了珉の極札を付す。南北朝時代の武将で歌人としても知られる今川了俊(貞世、1325〜1420)が書写した『源氏物語』は空蝉巻全文と桐壺・夕顔巻の一部が残存しており、彼が伊予守であったことから「伊予切」と呼ばれている。

源氏物語 二十八冊
寛延二年(1749)刊
文庫30 A0015

源氏物語の各巻のあらすじを代表的な歌、一枚の絵とともに紹介したもの。豆本(袖珍本)と称される小さな本に源氏の世界が凝縮されている。

源氏小鏡 六巻
江戸中期写
文庫30 A0156

源氏物語の代表的な梗概書である『源氏小鏡』を華麗な花鳥山水を金泥で描いた料紙に、墨色豊かに書写した巻子本。南北朝時代の成立とされるが、こうした巻子本だけでなく、江戸時代に入ると数種の版本が作られ、広く流布したが、和歌を中心としたその内容は、本来は連歌関係の人々を対象にしたものではないかとも言われる。

源氏小鏡 慶長古活字版 二冊
慶長十五年(1610)刊
文庫30 A0023

慶長古活字版の『源氏小鏡』の伝本は少なく、とくに二冊揃いは稀少という。源氏物語の世界は、江戸時代、印刷文化の隆盛にともなって、身分の高低を問わず広く流布していく。

源氏目録 寛永古活字版 一冊
江戸初期刊
文庫30 A0032

慶長版に遅れること約20年、寛永年間に板行された『源氏小鏡』の古活字版。

源氏小鏡 明暦版 三冊
明暦三年(1657)刊
文庫30 A0024

『源氏小鏡』の最初の絵入り版本。

源氏一部抜書 五冊 猪苗代兼載著
室町中期写
文庫30 A0042

猪苗代兼載(1452〜1510)自筆本。書名が示すごとく『源氏物語』五十四帖を、和歌を中心に抜き書きしたもので、連歌師である著者が連歌を作る時の参考に著わしたものであることが知られる。物語の簡略な梗概とすべての物語歌を収載し、また、各巻の初めに、連歌の寄合の参考となるべき語句を物語中から抜き出して列挙している。

源概抄 二冊
室町中期写
文庫30 A0036

『源氏小鏡』と同様に『源氏物語』の梗概書である。本書は招月庵正般(しょうはん)(1433〜?)筆と伝えられ、現存している『源概抄』の古写本では最古のものとみられる。

浅聞抄 三冊
江戸前期写
文庫30 A0040

著者は一条兼良(1402〜1481)とも伝えられているが詳しくは不明。『源氏物語』の代表的な梗概書である。

紫塵愚抄 四冊 飯尾宗祇編
室町中期写
文庫30 A0038

室町時代の連歌師・飯尾宗祇(1421〜1502)の編集。『源氏物語』全編にわたって各巻ごとに情趣ある部分を抜抄し、四帖に縮めたものである。代表的な場面や風情ある和歌が多く抄出されており、通読すれば、物語の展開や情趣ある場面をある程度知りうるようになっている。和歌や連歌の手引書とする目的だったのであろう。

源氏営鑑抄 二冊 猪苗代正益著
江戸後期写
文庫30 A0043

室町時代後期の連歌師、猪苗代正益(いなわしろただます)の記したもので、『源氏物語』の物語全体を視野に入れ、前後の巻の関連や人物を説明している簡明な梗概書である。本写本はもともと桐壺巻から篝火巻までの第一冊と、野分巻から竹河巻までの第二冊からなっていたもので、二冊目後半の宇治十帖の部分は後補されたものと思われる。伝本は極めて少ない。