幕末・明治のメディア
― 報道および広告に見る庶民性

 江戸から明治へと激動のうちに日本の近代化が進んでいくなかで、産業革命を経た欧米諸国との接触、鎖国から開国への方針転換、徳川政権の瓦解、維新政府の誕生などがあり、庶民の社会生活、経済生活は大きく変貌した。またこの時代に奔流のようにわが国に流れ込んだ西洋文物の奇新さに、人びとは目を見張った。
 そうした時代を様々なかたちで写し取り、今日われわれに伝えてくれる資料に、錦絵やいわゆる瓦版と呼ばれる一枚摺、見立番付、新聞、引札、絵びらなどがある。今日的にいえば、報道・広告メディアである。書物とは違い、一〜三枚程度の印刷物で、ほとんどが読み捨て使い捨ての運命にあった資料群である。しかし見方によっては、より生々しい「時代の証言」であるといえる。
 幕末から明治へと移りゆく世相を直截に語るものだが、ある時は諷刺し、ある時は諧謔をこめてその時代を活描している。大きな潮流に翻弄されながらも、権力への揶揄等にみられる庶民のエスプリと、なんのてらいもなくずうずうしい文句を並べたてる広告にみられる逞しさは、今日にも通じるものがある。
 早稲田大学図書館が架蔵する「西垣文庫」は、こうした資料を数多く蒐集した交友・故西垣武一氏のコレクションである。この「西垣文庫」を中心として、図書館が所蔵する関連資料を「幕末・明治のメディア展」として陳列・展観に供することとした。

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