ふみくら:早稲田大学図書館報No.33(1991.12.5) p.20

館蔵特殊コレクション摘報13

荻野研究室収集文書


  1. 分 類 文庫12

  2. 収蔵数 日本の古代から近世初頭の古文書類 1117点

  3. 目録等
    目録のみの単行書は刊行していないが、それに代わるものとして、『早稲田大学所蔵荻野研究室収集文書』2冊(吉川弘文館刊昭和55年)に、全文書の目録と本文のすべてを翻刻紹介している。その他、本文庫の概要を示したものに、『早稲田大学蔵 資料影印叢書』第14〜16巻(早稲田大学出版部刊昭和61年)でほぼ全点に近い文書を影印版で紹介している。さらに「早稲田大学蔵影印叢書(古文書集)」(『古文書研究』28号)、「古文書めぐり 早稲田大学図害館」(同上34号)、『早稲田大学図書館 館蔵資料図録』(早稲田大学図書館刊平成2年)などにもその概要が紹介されている。

  4. 収蔵(設置)年とその経緯
    昭和49年(1974)4月
    この年3月に停年退職された文学部教授荻野三七彦氏が長年にわたって研究室で収集したものを図書館へ移管された。すでに移管前から学園紛争に対処するため図書館特別資料書庫に保管されていたが、正式移管を機に関係学部の専門教員にお集まりいただき「荻野研究室収集文書研究会」を組織し、その全文紹介の作業を進めた。その結果が前述した『早稲田大学所蔵荻野研究室収集文書』2冊(吉川弘文館刊)にまとめられたものである。この作業が完了した昭和55年から学外にも公開するようになった。すでに移管時には、個別文書群ごとに巻子装や軸装が施されており、本館収蔵時には蔵書印と整理番号を付したのみであった。

  5. 収書の特徴
    本文庫所収の古文書類は、主に第二次世界大戦後の社会の混乱期に、かつての旧族名家から市場に流出したものを購入したものである。収集者である荻野三七彦名誉教授の言によると、当初は古文書学の講義用のサンプルとして集めはじめたそうであるが、順次その対象が広がっていき、最終的には年代的に古代から近世初頭のものに及び、内容的にも律令制文書、公家文書、寺社文書、武家文書と広範にわたっている。とりわけ武家文書と寺社文書との比率が高く、日本の古代末から近世初頭に領主として君臨した各地の有名氏族や寺院に関係したものが多い。質的にも単なる古文書のサンプルという以上に、重要文化財に指定されたものを中心に、各時代、各地域についての第一級のものが多い。とりわけそれらの中にはこれまで学界に未紹介のものも多く、公開以来、これらの新史料を駆使しての成果があいついでいる。

  6. 収書者
    荻野三七彦:日本中世史、日本古文書学者。文学博士。早稲田大学名誉教授。明治37(1904)年東京市本郷生まれ、昭和4(1929)年に早稲田大学文学部国史専修を卒業後、東京帝国大学史料編纂所嘱託となる。昭和16(1941)年4月に文学部助教授となり、同24(1949)年に教授、同25年に大学教務部長、同43(1968)年に大学理事、同45年に図書館長を務め、同49年(1974)3月に停年退職された。その間法隆寺嘱託、日本学術会議会員(2期)、日本歴史学協会委員長、軍事史学会理事などの学界活動も行い、とりわけ、昭和41(1966)年には日本古文書学会の設立を実現させ、以後長年にわたって同学会の事務局や大会開催を担当して、同学会の基礎をきずいた。大学退職後も徳富蘇峰が収集した成簣堂文庫(お茶の水図書館)の古文書整理・紹介に当たっておられるほか、数々の著書や論文を発表されて、研究活動と後進の指導に当たっておられる。
    (文責:柴辻俊六)


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