ふみくら:早稲田大学図書館報No.28(1991.12.5) p.12

新収資料紹介19

「ワイマル友の会」旧蔵書

本田博(総務担当プロジェクトチーム)
森谷博志(同 上)

l.内訳
  図書約l,800冊、雑誌約15種、その他新聞、抜刷、ポスター等。

2.目録
  印刷目録 1992年l月刊行予定。

3.寄贈者
 「ワイマル友の会」日本−DDRゲルマニスティク交流促進協会は、日本とドイツ民主共和国(DDR)の学間上の交流・協力をすすめ、わが国のドイツ語学・文学研究の発展に寄与することを日的として、1967年9月30日に設立された。以来、相互の研究成果の紹介等の活動を通し、DDRとの学術交流の窓口として、長年にわたり先進的な役割を果たしてきた。
 しかし、昨年10月のドイツ統合・DDR消滅にともない、その歴史的使命も幕を下ろし、同会は1991年5月をもって解散に至った。ただ同時に、それまでDDR学術交流機関から寄贈を受けた諸資料については、これを散逸させず、広く研究者や学生の利用に供することとなった。もともと会の事務所が本学の文学部内にあり、資料自体も法学部をはじめ本学教員の研究室に分散して保管されていたことから、当図書館が一括して寄贈を受けたものである。

4.整埋方法
 図書の整理については、オンライン・システムWINEに書誌データを入力し、そこから印刷目録を直接出力する方式をとった。また当館では、今年度整理分から図書分類体系を変更しており、今回の寄贈図書も原則として新分類に従い、地下2階の研究書庫内に配架した。
 収集経緯・目的の性格上、異版本やテキストの複本が比較的目立ったが、文献的意義と利用者の便官等を考え、すべて館蔵資料として受け入れた。また、寄贈図書の各々には、「ワイマル友の会旧蔵書」の印を押し、一般本と識別させた。
 なお、雑誌その他については、当面データ入力はせずに、まとめて前記の印刷目録に収めてある。

5.資料案内
 東部ドイツで刊行された、新旧ドイツ文学および語学書が収書の中心である。ゲーテに関しては、存命中に刊行の全集をはじめ、伝記・作品論まできめ細かく集められている。さらにシラーやハイネ、ヘルダーらの全・選集もカバーするなど、古典主義前後は質量ともに充実した内容である。
 「ワイマル共和国」時代の文学作品群も一方の核であり、ブレヒト、マン兄弟、ベッヒャーらの小説・詩・戯曲等はよく揃っている。また、それらを政治的観点からとらえた研究書・解説書も数多く、DDRにおける「ワイマル文化」の特有な位置づけが窺える。
 ドイツ語学についても、入門書を中心に専門的な語法論まで幅広い。とかく「西側」に偏りがちだった日本のドイツ語研究・教育の中で、DDRの語学関連書の積極的な収集は、統一後いっそう重要な意味を持つと思われる。

6.付記
 学術団体から、このようにまとまった寄贈を受ける機会はあまりない。個人蔵書に比べ、より広範で綱羅的な収集が期待できる点で、受け入れ側のメリットは大きい。もともと、中央図書館としてこの分野が手薄だったこともあって、蔵書構成のバランスをはかる上でもたいへん有意義である。
 それとともに、現代DDR文学が予想以上に充実していたことにも注目したい。「旧」東欧出版物の入手は今後も容易でないだろうが、今回の寄贈をきっかけに、これをユニークなコレクションに発展させていければと思っている。


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Archived Web,January 14, 2000