No.33(1991.12.5) 4-5


私立大学図書館協会総大会・研究会

菅原 通(学術情報システム課長)



 7月30日から8月2日まで、第52回私立大学図書館協会総大会・研究会が井深大記念ホールで開催された。

1.私立大学図書館協会とは。

 わが国には、4年制の私立大学は372校あると記憶している。日本の4年制の大学は、確か507校と記憶しているので、73%が私立大学ということになる。私立大学図書館協会は、我が国の4年制の私立大学に設置された図書館を会員とする任意団体である。同様の組織には、国立大学の附属図書館を会員とする国立大学図書館協議会、公立大学の付属図書館を会員とする公立大学協会図書館協議会がある。さらに、この3つの大学図書館の会員組織を横断的に 構成する組織として、国公立私立大学図書館協力委員会、大学図書館国際連絡委員会、日本図書館協会大学図書館部会などがある。

 私立大学図書館協会は、2つの地区部会(東地区、西地区)に別れて日常活動を行うほか、地区部会の横の組織である役員会、委員会における活動もある。ちなみに、協会の加盟校は、現在330館(328校、全私立大学の約88%が加盟)である。

 今回、本学が当番校を引き受けることになったのは、協会の最高の議決機関である総会の開催である。今日では、この総会の含む全国大会、名付けて、総大会・研究会が年に一度、7月の下旬から8月上旬にかけて開催される。加盟校が持ち回りで総大会・研究会の当番を引き受ける。記録によると、本学が総大会の当番校となるのは、第22回総大会(昭和36年)以来のことである。

2.総大会・研究会の内容

 今回の総大会・研究会の開催にあたっては、多くの館員から手助けをいただいたが、とくに、会場の準備、資料の袋詰め等々の業務にあたって総務課の人の苦労は多大なものであった。このように多くの人の準備に助けられて、第1日目の幕が下ろされたのであった。

大会第1日 参加者は206校、約380名であった。午前は、参加者へのオリエンテーションにつづいて、高橋図書館事務部長の司会のもとに、野口館長、安藤常任理事、常任理事校近畿大学中央図書館喜多館長の挨拶につづいて、来賓として来られた加藤木国立国会図書館長、鴫野文部省学術情報課長、高橋JLA理事長の挨拶があった。開会式に引き続き表彰式を挙行した。永年勤続表彰式では、6名の館員が勤続40年賞を、1名が勤続30年賞を、4名が勤続20年賞を受けられた。また、協会賞が「早稲田大学図書館百年史」と「館蔵資料図録」の執筆・編さんに係わった館員の業績が評価され早稲田大学図書館に授与され、野口館長が代表して受け取られた。

 午後は総会である。平成2年度の会務報告、および審議事項9件が承認された。休憩後は、奥島前館長の「私の仏法古書遍歴」と題する講演である。明治のお雇い外国人による日本における法律整備の始め、現在我が国においてフランス法が再評価されていること、商法の分野でのフランス法の重要性をはじめに説かれた。そのあとは、先生のフランスにおける文献収集の話を、とくにフランスの国立図書館、大学図書館を利用したときのエピソードをおもしろおかしく話され、古書求めての旅のエピソードなどを話された。

 午後6時からは懇親会が大隈ガーデンハウス2階で開催された。懇親会では、カリフォルニア大学バークレー校東洋図書館長ドナルド H. シャイブリー博士を特別ゲストとして迎え、スピーチをしていただいた。

 第2日 大会の2日目は研究会にあてられている。午前中は、昨年度協会の研究助成を受けての研究「国際基督教大学大学院修士論文に掲載された参考文献の分析」についてその成果の発表があった。発表は、同大学図書館の前館長鬼頭氏と電算部門主任の黒澤氏によって行われた。これは、1978年から1990年にかけて、教育学研究科、行政学研究科、比較文学研究科に提出された修士論文496件に掲載された参考文献について一点一点、ICU図書館に所蔵されているかどうかを調査し、修士論文を書こうとする大学院生にとっての蔵書の充足率を調査するとともに所蔵していない文献について学生がどのようにしてそれを入手したかを調査したものである。所蔵していない文献の入手方法については、書誌ユーティリティを利用しての分析、面接調査などを行っているが、提出後かなり時期が経過したあとの追跡調査であるため、十分でなかったとともに、こうした利用者の文献入手のための動態調査の困難さをかいま見る思いがした。

 午後の第2セッションでは、「電子メディアの発達と一次情報の流通」と題する学術情報センター安達淳助教授の講演があった。

 安達氏は、1980年代以降の技術動向と、ランカスターなどによる「紙なし社会」出現の予測は、結果的には当らず、「紙なし社会の出現は、ごく限定された領域にとどまる」であろうとの認識から、今後は、紙も増え、電子メディアも増える結果、メディア多様化、情報流動の多様化が進行するであろうとの考えを前段で示された。その上で、技術動向としてのCD-ROM、電子ファイリング・システム、ハイパー・メディア、SGLLなどについてふれ、出版社のこれからの動向について述べられた。さらに一次情報の流通の事例としてのBLのDocument Supply Center、 ADNIS計画、UMIの活動、Macury Projectについて話された。

 次に、学術情報センターの坂上目録情報課長は、図書館におけるILLサービスをシステム化することにより、研究者への情報の提供を迅速化しようとの意図で開発を進めている「学術情報センターILLシステムの概要」についての報告があった。

 休憩ののち、第3セッションのパネルディスカッションが行われた。今回のテーマは、昨年の協会の懸賞論文のテーマ「21世紀の大学図書館」シリーズ、その2として設定したものである。慶応の渋川雅俊氏の司会のもとパネリスト5人が15分づつ意見表明を行い、フロア―との意見交換に入った。

 このような状況の中で、研究会を終了し、引き続き、閉会式が挙行された。高橋部長の司会のもと、当番校野口図書館長の閉会の辞、役員校を代表して喜多近畿大学図書館長からの参加者への御礼を含めての閉会の挨拶があり、続いて、来年度の当番校慶応義塾大学渋川本部事務室長(清水所長の代理)から参加者を代表しての挨拶とともに来年度の歓迎の挨拶があった。

 第3日目は、図書館および国際会議場を見学してもらった。

 今回の大会は、参加登録者が延べで579名であった。



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