No.32(1991.10.25)p9

1991年度マイクロ化の進行状況



加 藤 絢 子(明治期資料マイクロ化事業室)


    本年度は第22ユニットの有朋堂文庫から撮影を開始した。

    有朋堂文庫は明治43年に出版を開始し、大正4年に完結した全121冊(本体120冊・総索引解題1冊)の大きな叢書である。当館所蔵のものは明治から昭和初期にわたっているが、有朋堂文庫として一括してマイクロ化しておくことが、利用者に便利であろうということから、明治時代に出版が開始された継続出版物という位置付けで、121冊全てマイクロ化した。

    内容は源氏物語・古今和歌集をはじめ平家物語・里見八犬伝等々、日本古典の集大成として、人々に広く親しまれた叢書である。第23ユニットの大部分もこの叢書が占めている。

    次いで小説の部(へ14)を撮り進み、天理図書館やバークレー本と調整しながら作業を進めている。

    現在(‘91.9)撮影中の第26ユニットは、唱歌・軍歌及び俗歌謡の部である。神奈川県立図書館本と早稲田大学図書館本が半分ずつ収まる予定になっている。

    マイクロ化プロジェクトがスタートしてすぐに、神奈川県立図書館からご連絡をいただいた。早稲田大学が明治時代の資料をマイクロ化するということを聞いて手伝えることがあったらと所蔵明治期本のリストをお送りいただいた。こちらからお願いしないうちにそのようなお申出をいただいたことで、大変勇気づけられた。その重複調査がこの夏やっと完了し、善は急げということで9月初めに、約280冊を借用した。軍歌・唱歌・俗歌謡等、珍しい版を所蔵しておられるので、小説の部を撮影中ではあるが、間に挟み込む形をとった。

    早大図書館の場合、軍歌・俗歌謡・小学唱歌等は、その内容によって文学・芸術(音楽)・教育の分野に分散所蔵されている。神奈川県立図書館の唱歌類を核として今回あえて早大図書館の他分野のものも全て集めてきて、 文学の部に繰り入れた。

    文学者として名高い人々が作歌活動をしていること、また、歌そのものは詩・和歌の一部であり文学と見なすことができるだろうという判断である。

    「汽笛一声新橋を...」で始まる鉄道唱歌、地理学習の参考になる地理唱歌、時代を反映し偏見に満ちた征露軍歌、懐かしいメロディーを思い出させてくれる小学唱歌、そのどれもが当時の思想・風俗・人情を雄弁に物語っている。

    早稲田大学図書館では、小さく薄いこれらの唱歌類のほとんどを取扱い上から、特別本に指定しているため、保存状態は大変良好である。表紙のカラーも美しく、今までほとんど使われていなかったようである。しかし、紙質は非常に悪く、色も赤茶けて、触るとポキンと折れてしまいそうなものが多い。

    出版当時街中どこでもみかけられたこれらの小冊子は、歌われ利用されて、それだからこそごみくずとなって、ほとんどのものが消えてしまったのではないだろうか。マイクロ化の後は、また原物を物を大切に守ってゆきたいものである。

    一方、小説の部については、本館所蔵の部分だけで900冊ほど所蔵しており、その他柳田文庫・本間文庫・逍遙文庫・演劇博物館本と、相当数所蔵していると考えられる。しかし、この分野は利用者が多いため表紙や奥付が無くなってしまった破損本や汚れ本が多く、文庫中のもの以外はどの程度使用できるか大変心もとない。尾崎紅葉の金色夜叉を例にとってみると、本館3部所蔵しているが、破れていて使い物にならず、バークレー校所蔵の1セットをフィルム化することになった。村上浪六や黒岩涙香の小説類も同様で、大部分を天理図書館から借用することになった。それでも、できるだけ早稲田大学の所蔵本を使いたいと思い、1冊1冊点検を繰り返している。

    本年度中には小説の部をクリアーしたいと考えている。



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