No.31(1991.9.20)p 14


「早稲田文学」創刊100年記念

「早稲田と文学の一世紀」展予告

同展準備委員会


雑誌「早稲田文学」は明治24年(1891)10月、坪内逍遙(1859〜1936)の主催により創刊された。本年は、それから数えてちょうど100年目にあたる。

    逍遙主宰の「早稲田文学」は約7年間、通巻156号をもって一旦休刊する。これをふつう、「第一次早稲田文学」と呼ぶ。続いて明治39年、ヨーロッパ留学から帰朝したばかりの島村抱月によって復刊された「早稲田文学」が第二次。昭和9年、谷崎精二が中心となって出されたものが第三次。以降も断続的に刊行され、現在の第八次にいたっている。

    今回創刊100年を記念し、「第二次早稲田文学」の復刻、「早稲田文学」誌での特集号などが計画されている。一方図書館の主催で近代文学が一世紀の流れを回顧しようとする壮大な展覧会がこの秋に予定されている。図書館内に設けられた準備委員会では、実行委員会の教員研究者の指導・助言を得ながら、現在、館蔵の「稲門ライブラリー」資料をはじめ各方面からの借用を含んだ資料収集、撮影、図録編集の作業に取り組んでいる。 
     全体は以下のごとく10のパートに分けて構成される。
T 逍遙とその周辺

近代文学の革新者・逍遙と二葉亭四迷のつながりを軸に、透谷・独歩ら「プレ早稲田文学」ともいうべき人々。

U 文学科創設と第一次「早稲田文学」 逍遙と大西祝の教えを受け、東京専門学校文学科から輩出した逸材たち、金子筑水、島村抱月、後藤宙外、綱島梁川ら。
V 第二次「早稲田文学」と近代文学の成熟 「自然主義文学の牙城」として文壇をリードした明治末〜大正前期。抱月を中心に、正宗白鳥、広津和郎、宇野浩二ほか。
W 近代詩歌の豊饒 北原白秋、若山牧水、窪田空穂、会津八一をはじめ、綺羅星のごとく輩出した稲門の詩人・歌人・俳人たち。
X 早稲田と演劇 文芸協会から芸術座へ、わが国演劇革新の中心となった早稲田の人々。新劇や大衆演劇の先駆者たちも多い。
Y 児童文学の群像 小川未明、浜田広介、坪田譲治をはじめ、わが国児童文学の確立に貢献した人々。白秋、八重、雨情の童謡。
Z プロレタリア文学・大衆文学 青野季吉、葉山嘉樹らプロレタリア作家・詩人たち、江戸川乱歩・直木三十五を中心とする大衆文学の作家たち。
[ 大正から昭和へ 関東大震災を境に、文学状況は大きく変わってゆく。批評と研究、海外文学の移植、種々の同人誌の簇生。
\ 第三次「早稲田文学」と昭和の作家たち 横光利一、井伏鱒二、尾崎一雄、丹羽文雄、石川達三ら昭和文壇に重きをなした人々の群像。
] 現代文学と早稲田 現在、各方面で活躍している稲門の作家たち。

以上をみてもわかるとおり、実にスケールの大きな、気の遠くなるような展示である。委員全員気が遠くなっている。 第9章までにとりあげる文学者の総数は、およそ300人近くに及び、早稲田と「早稲田文学」を軸にして文字通り「集まり散じた」人々の群像を、日本近代100年の流れのなかに描き出そうという試みである。至難のわざといってよい。

協力、ご支援の程をお願いしたい。


同展覧会は本年10月9日より14日まで、会場は池袋の西武百貨店。会期中には展示のほか、何人かの作家の講演会も予定されている。


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