No.25(1990.10.15)p 8


分類J/MARC仕様

深井人詩
(和書データベース化事業)


WINEの和書遡及再整理事業は、Japan/MARC仕様で進められている。目録規則(NCR)は新版予備版の内容に沿っており、分類は日本十進分類法(NDC)新訂第8版に、件名の付与は国立国会図書館件名標目表(NDLSH)第4版に準拠しているが、現実は昭和44年以降分が公開されているJ/MARC仕様で作業が行われている。現在は既に昭和44年以降収蔵分が終了していて、すべてオリジナル・カタロギングを必要とする昭和43年以前収蔵分に入っているが、これまではJ/MARCのコピー・カタロギングに目録、分類、件名の訂正を加えてきたのである。

毎日25名の入力者が原本を見ながら入出力、点検した出力シートを、さらに原本と照合点検する4名のうちの1人として、ここでは遡及環境の画面で見る分類上のJ/MARC仕様の特長を見てみよう。すでに遡及環境から学生一般が利用できる現行WINE環境に昭和44年以降所蔵データが移行済となった今秋からは、この仕様独自の分類上の傾向に注意しておくことは、この書誌データベースを情報検索する場合に役立つことと思われる。

分類上特に目立つものは一分類項目内に多量の集合がおきている箇所である。個人の伝記、評伝類は多いものだが、日本人のそれも2人までを含む個人伝記、自叙伝、日記、書簡、語録、逸話、追悼録、年譜など伝記資料一切を収めてよい289で289.1の数量が9610(2172)件〔左はJ/MARCに遡及オリジナルプラス(右は現行WINE)の数量。8月20日検索。以下も同じ〕である。この数は、「その思想、作品などと不可分の関係にあるので、その主題の下に収める」とされている哲学者、宗教家、芸術家および文学者の伝記を除いたものである。そこで12行表示の簡略表示で全検索しようとすると遡及画面ならば800回画面転換(打鍵1600回)を要する。この多量の数量表示は、これはこれで統計的に役立つものであることは認められるが、やはり分類項目内の集合数は他項目とバランスがとれた数量が望ましく思われてくる。289.1ではその「思想と不可分で、その主題のもとに」おきたい人物の伝記は多い。例えば「菅野スガと石上露子」は婦人解放の367.2へ。「大隈侯小伝」は、日本政治史の3121へ。「東急の創立者五島慶太」は経営の335へ、という具合に。一方そうでなければ、思想者、文学者などの例外なしに個人伝記の一大集合をこしらえてみたいと思わせる。それというのもこの分類項目は今後も一層増加の一途を辿るだろうと予想されるからである。

激動の昭和史といわれる時代に生きて、変化に富む体験をした日本人は、高度成長した経済力を背景に海外への進出経験も多様化して、ルポルタージュ、手記、記録ものの916では6610(549)件となっている。ここは記録といっても文学の範囲であって、事実であっても物語風記述だと、ここに集められるが、内容的には他部門においた方が有効利用されると思われものばかりである。すなわち「青森空襲の記録」は210.75の太平洋戦争か、2121の青森県に、「太平洋ひとりぼっち」は785.7ヨットへ、「山口組三代目」は368.5暴力団においたらと思われるのである。

ところで個人伝記に入っていない文学者個人伝記はどこにあるか。例えば英文学の作家の評伝、930.28は多量集合となるところだがそれほどではなく576(601)件。このように少数なのは、そこでさらにジャンル別にわけられているためである。英詩931は744(946)件、932英劇曲は512(482)件、英小説933では10622(1133)件となっている。この中に英文学者伝記が多数分散混入しているのである。ところで日本文学だと913は913.3古代小説、913.4中世小説、913.5近代小説、913.6近代と時代区分されているが英文学931〜8(仏文学941〜8ほかも)は時代区分されていないために大量集合している。利用者はこのようなことも知っていて、著者名や刊行年などによる複合・限定検索に習熟してもらいたいものである。

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