No.25(1990.10.15)p 7


遡及入力事業とデータベース

鶴見大学講師
掘込静香


遡及入力作業の特微

MARCの活用...WINEシステムを拝見して受けた第一の印象は、入力時の負担を軽減するためにJAPAN/MARCとWINEデータベースを常に参照でき、効率よい方法を採用していることであった。入力キーに対してヒットしたデータだけでなく、KWIC形式で14件ものデータが表示されブラウジングできるのは最適なデータを選択できる良さを持っている。J/MARCの利用と、登録データを即時にデータベースとして活用できるシステムの大きさも評価したい。

現物主義...データベースの作成を第一の目標とし、従来とは異なるデータ構造と記述方法を持つデータの作成はいわば資料の再整理である。従って資料そのもの、現物からデータを作るのは当然のことである。とはいえその当然のことがなかなかできないのが普通で、これまでのカード目録の否定と考えられたり、現物の移動を伴う困難さを嫌われたりする。目録作業の原点に立った姿勢に一種の感動を覚えた。

入力の速さとデータの質...この事業は紀伊國屋書店とのタイアップによって遂行されているという。それだけに資料の搬出、データ作成、データ点検、資料の返却という一連の作業に機動力が発揮され、短期間に大量のデータベースが出来上がりつつある。この作業の中で最も大切なのは高品位の書誌データを維持することで、データ1件ごとの点検、特に主題検索のための分類記号、件名標目の付与、点検には主題分析力と蔵書全体を把握した判断力が要求される。

データベースの利用サービスを...すでに10数万件のデータが作られている。データベースは利用されなければ価値は半減する。一日も早く利用可能になることが望まれている。筆者が訪問したとき、図書館学の古典ともいうべき図書の数々が作業中であった。そのような資料の存在と所在を大学の内外へ報知することもデータベース作成事業の意義であろう。

WINEデータベースと全国的データベース

ネットワークの中のデータベース...WINEシステムは優れたネットワーク機能のもとで動いている。従ってWINEシステムはDOBIS/LIBISの利用館グループの中でほぼ自動的に全国レベルの総合目録を作り上げていることになる。その先駆者的役割を果たし、特に遡及入力は基礎的データベースの構築という事業といえよう。

J/MARCへの反映を...大量の現物とJ/MARCとの照合によりJ/MARCの誤りや不備不都合を発見する機会があるという。WINEには正しく整合性の取れたデータを登録することになる。しかし発見したJ/MARCの誤り等は訂正される機会が今のところない。J/MARCの利用者はJ/MARCから多大の効果を得ているのであり、今後もJ/MARCは大いに利用されよう。利用結果を何らかの形でフィードバックしてJ/MARCの質を高める手段を図書館界全体で考えたいものである。

総合目録データベースの並存

学情系UC、WINE系列UC...現在図書館界ではいくつかのコンピュータネットワークシステムが稼動し、それぞれのシステム内で書誌データベースが利用され、参日館の総合目録が形成されている。学術情報センターを中心とする図書・雑誌総合目録(Union Catalog)、UTLASのUC、WINE系列のUC、さらにOCLC系列のUCもある。総合目録の作成は図書館界の課題であり、相互協力活動に不可欠である。システムが異なるために総合目録があっても情報が得られない事態は避けなければいけない。

横断的な利用を...すべてのコンピュータシステムを結び、複数の総合目録データベースを検索資料の存在確認ができるコンピュータネットワークの早期実現を切望している。



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