No.25(1990.10.15)p 5


和書データベース共同作成事業
―この一年と今後―


葛I伊国屋書店情報制作部長 高井昌史


図書館機械化のブームは続いている。最近は電算機メーカーが図書館システムのパッケージを新発表又はバージョンアップして激しい競争をしているのでこのこのブームに一層拍車をかけている。どこのメーカーも自社の図書館システムが図書の受発注・図書目録検索・雑誌目録検索・図書管理・雑誌管理・閲覧管理など、トータルシステムのパッケージとして完備されているとPRしている。しかし、和書・洋書・雑誌のデータベースを完成し、このトータルシステムをすべて運用している図書館は少ない(ほとんどないかもしれない)。和書・洋書・雑誌のデータ作成、特に遡及データ作成までとなると、どこの図書館も未着手か進行中の状況である。

利用者が機会検索と目録カードの併用ではやはり不便であり、図書館機会化の最終的なゴールは所蔵の図書・雑誌のすべてをデータ化し、利用者が目録検索できるようにするという考えがある。理想かもしれないが、私も同じように思う。

蔵書数は中規模大学図書館で数十万冊、大規模大学図書館になると百万冊を越える。世界的有名なハイデルベルグ大学やオックスフォード大学が最近、大規模な遡及データ作成を開始したと聞く。洋書についてはOCLCの様な書誌ユーティリティーが日本でも利用でき、遡及データ作成は簡便となり、促進された。しかし、和書となると戦前、大正期、明治期まで遡ってのデータ作成に対応する書誌ユーティリティーはなく、オリジナルカタロギングが中心となる。この結果、難事業となり、金・物・人、そして長い期間を要するが為に多くの大学が遡及データ作成に躊躇している。この様な状況にあって、早稲田大学と和書データベース作成の共同事業の入力を開始し、いくつかの難関、苦労を乗り越えて一年半が経過した。現物図書からオンライン入力でデータ作成するということは想像していた通り難事業であった。しかし、良質のデータベースを作成するというスタッフの決意により、この難事業にも徐々に慣れてきた。入力スタッフの採用、教育も大変である。採用については、会社の全面的なバックアップがあり、教育については専従担当者、先輩社員の情熱で乗り切ってきた。そして、今年の8月上旬には学習図書を含め15万冊のデータを作成した。この一年半の経験がスタッフ全員の自信につながった。このデータは既に紀伊国屋書店を通じ他の図書館に利用されている。最近は県、政令都市レベルの大型公共図書館の機械化の計画も多い。大学図書館に限らず、公共図書館にも利用される可能性が出てきた。広く利用される為、一日も早く本館所蔵分の52万冊の和書データを完成させ、他の図書館の和書データ及び早稲田大学の学部図書館(室)の和書データとして利用していきたい。

*  *  *

今年7月、新刊書を含めた本館受入分(年間約2万冊)の和書データ作成という新規共同事業が早稲田大学、紀伊国屋書店の間で合意し、契約を締結した。この新規模事業は入力体制の確立、典拠のメンテ作業、そして入力シュミレーションテストの後、来年本番入力開始を予定している。従来の遡及データに新刊書のデータも加わったということで、データベースは豊富になる。これで、大きな目標の図書データベースセンター(日本版OCLC)へ一歩前進した。

現在約35名のスタッフが早稲田大学の図書館員の皆様と毎日和書データ作成に奮闘している。(明治期までの和書を現物の図書からオンラインでデータを作成するというチャレンジ精神、そして自分達が作成したデータが他に利用され役立つことを夢見ながら・・・)

職場の雰囲気も良く、モラルも高い。会社もベンチャービジネスとして大いに期待している。これからもいくつもの難関があると思う。全員で一丸となって乗り切っていきたい。




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