No.25(1990.10.15)p 3


遡及入力の現状と今後の計画

中村義人
(和書データベース化事業室担当調査役)


当館の和図書の遡及入力計画と入力作業については、「和書データベース化事業室特集(1)」として、平成元年9月に既に紹介いたしました。その後1年を経過した現在、此の間の進歩状況と今後の計画について、前号の記事と重視する部分もありますがお知らせします。

前号で既に紹介いたしましたが、当館では和図書のカレント分(昭和60年以降)の図書整理についてはシステム化され、コンピュータ端末のオンライン検索が始められている。しかし昭和60年以前の目録検索は依然として、カード目録か冊子目録に依存せざるを得ないのが現状である。図書館のシステム化が進展している今日において、既存の目録との併用という不便さを解消し、また一方においては、他大学の遡及入力に少しでも貢献できるようにと、遡及データの構築を急いでいるのが現状である。

<進行状況>

遡及入力の進行状況と今後の計画について次頁に図示した。第一期分として昭和60年〜昭和44年度に受入れた図書を、平成元年2月より入力作業を開始し、平成2年6月に全部門について完了した。その他に学習図書4万冊についても入力、装備等も終了している。本館図書の合計約14万件が処理されたことになる。当初の予定では以上の作業を新図書館オープン時までに完了できればと考えていたので、搬入搬出作業に効率の悪い大型本、館外貸出し中の図書を新図書館移転後に処理するため保留したとはいえ、予定より進んでいると考えている。

<今後の計画>

前述のとおり第一期分の遡及入力が6月に全部門終了したので、すでに7月より昭和43〜昭和20年までの、いわゆる戦後の分についての入力作業を開始している。はやくも五部門(政治、社会、教育、軍事、哲学)については終っている。この勢いを以って一気に遡及入力を進めたいところであるが、新図書館開館に備えて、数年前から購入済の一般図書(
開架用)4万冊の遡及入力と装備を急がねばならないため、本館図書の遡及入力を一時中断することになる。

図に示すように第二期分(昭和43〜昭和20年)約20万冊を2年間で処理し、戦前、大正、明治各時代に受入れた約15万冊を1年間で入力できればと考えている。明治本については「明治期資料マイクロ化事業室」で作成したカード目録を基に、データシートを作成して入力する予定である。

<今後の課題>

此の1年間、精度の高いデータの作成を目標とすると同時に、1日の処理冊数をいかに伸ばすかが焦点であった。速かろう、悪かろうにならないためにも紀伊国屋書店関係スタッフと我々が一番苦心している点である。今後、作成されるデータは全てオリジナルであり、既成のマークに頼ることはできないのである。すでにオリジナル入力を開始して3ヶ月あまり経過したが、遡及入力の対象となる52万冊を統一のとれた分類、件名を付与することの難しさ、精度の高い詳細なデータをオリジナルで作り出すに、いかに手間のかかるものか、入力者も点検する我々も身をもって感じており、1日の処理冊数の低下が如実にそれを示している。

つまり、これからが此の事業の正念場であり、そこで作成される書誌データの真価が問われるのである。精度の高さを維持しながら1日の処理件数をいかに増やすか、質と量、此の兼合をどう調整していくかが我々の課題でもあり、大きな責務でもある。

今後も大なり小なり幾多の課題が待ち受けていることと思うが、遡及入力に王道はなく、1日1日のたゆまざる努力こそがデータ作成の上で最も心しなければならないことであり、そこにはカードの世界も、システム化の時代であろうと変るものではないのである。



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