ふみくら:早稲田大学図書館報No.20(1989.11.10) p.12

杉捷夫文庫(仮称)について

本間暁 (整理二課長)

 7月21日付読売新聞夕刊でも報道されたが、18000冊余に及ぶ東大名誉教授杉捷夫先生のフランス文学・語学を中心とした蔵書が図書館に寄贈されることになった。寄贈冊数の量では勿論、学外の方からの寄贈ということもあり、受入・整理をする図書館としては身の引き締まる思いである。
 杉捷夫先生は、明治37年(1904)新潟県で生れ、東大、立教大学等で教鞭をとられた後、都立日比谷図書館の館長を歴任された。専攻はフランス文芸批評史である。また、モーパッサン、メリメなどの流麗な翻訳で我々にも馴染みのある方である。
 18000冊余の図書は、杉先生の蔵書(約5000冊)と先生が購入された二つのコレクションから成っている。ソルボンヌ大学教授で、フランス文学史学会会長であった故 R.ルベーグ氏(1895−1984)の旧蔵書(約7000冊)、ストラスブール大学教授で、パリ言語学会会長であった故 P.インブス氏(1908−1987)の旧蔵書(約6000冊)である。杉先生、ルベーグ氏の蔵書がフランス文学中心であるのに対し、インブス氏の旧蔵書はフランス語・ロマンス語を中心とした言語学関係のものである。これら三つの蔵書から成る杉捷夫文庫(仮称)は、質量ともにフランス文学・フランス語学のコレクションとして、日本では勿論、世界でも有数のものであろう。
 杉先生は、都立日比谷図書館の館長をなされたこともあり、図書館での資料の扱い、とくに利用面について強い関心をお持ちである。今回の寄贈に際しても、ご自身の収集された資料が、フランス文学研究者にどれだけ活発に利用されうるかを考えられて、寄贈先をお探しになったと伺っている。このような先生のお考えを充分尊重して、寄贈先となった本図書館では事に当らなげればならない。何よりも、できる限り早急に、寄贈された図書を利用可能な状態にすることが大切であろう。そのためには、様々な配慮も必要となってくることは言うまでもない。
 さて、受入作業の状況と今後の予定であるが、7月下句にルベーグ氏旧蔵書を図書館に搬入し、点検・データ照合・データ作成などの作業を行った。今後、インブス氏、杉先生蔵書の順で作業を行う予定である。一連の作業を終了した図書は、新館開館までルベーグ・インブス両氏のものは本庄分館に、杉先生蔵書は利用者の便も考え12−3号館に仮配架する。平成2年3月ごろまでに三部の仮目録を作成する。仮目録完成時より利用を可能とする。これを第一段階として考えている。
 その後、本格的な整理を行い、本目録を完成させる予定である。整理・本目録の作成には多少の時間がかかることが予想されるが、なるべく早く、かつ完成度の高い目録を作成したいと考えている。整理・目録作成には専任職員一名を専従させ、他の課員の協力は勿論、嘱託等を雇うことも含め、完成に向けての体制を整えていく所存である。
 なお、仮目録作成については、寄贈決定以前より、杉先生の弟子にあたられる中条忍氏(青山学院大学教授)、山本顕一氏(立教大学教授)、青木詔司氏(青山学院大学講師)の手によって、パソコンヘの書誌データの打ち込みが行われていた。そのデータを引きつぎ、それを基にして仮目録の作成にあたる予定である。仮目録をことのほか早い時期に発行できる見運しがたっているのは、作業にあたられた方々の大変な努力によるところである。記して感謝する。


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Archived Web,December 21, 1999