No.16(1989.1.25)p 25

明治期資料マイクロ化事業室
(WNSTC)の近況

明治期資料マイクロ化事業室



    明治期資料マイクロ化事業室が高田牧舎の3階に開室してから1年半が経過した。スタッフはアルバイト2名(内1名は保存箱製作担当)を加えて4名になり、雄松堂書店(頒布代理店)とのチームワークも上々、11月末で第4ユニットの撮影が完了した。昭和63年4月撮影開始以来。主に「衣笠詩文庫」の明治期本を中心に、761点・2000枚のマイクロフィッシュが出来上った。今後は文学総記(ヘ1)より順次マイクロ化していく予定である。撮影済みのマイクロフィッシュは、図書館マイクロ資料室で閲覧が可能である。撮影が済んだ図書については、隔月末の「図書新聞」紙上にリストを掲載し、速報版としている。

    一口に明治期本のマイクロ化と言うが、仕事の内容は多岐にわたっている。異版をチェックした本を借り出す。切り取り欠頁がないかどうかの確認、初版・再版の訂正の有無調査等、なかなか神経を使う。撮影すると決めた本は1頁ずつ刷毛で埃を払い、さびた釘を取り除き、本のクリーニング作業を行なっている。クリーニングすることによって、フィルムの鮮明度も増し、本の劣化進行がいくらかでも抑えられるのではないかと思われる。撮影後は保存箱(中世紙ボード使用)に入れて書庫に戻している。本は1冊ごとに大きさも厚さも違うので、本に合せて手作りで作製する。なかなかはかどらないが、現時点ではこれ以上の保存方法が考えられないので、保存箱方式を採用した。資料の保存を考えると、マイクロ撮影済みのものは、極力マイクロ資料の方を利用して欲しいと思う。

    マイクロフィッシュの頒布は、雄松堂書店を通して行なっているが、11月末現在、明星大学他17図書館を数えている。また、現在検討中の機関も数ヵ所あると聞いているので、今後が期待される。なお、頒布に際しては、各申込機関から頒布申込書を提出してもらい、著作権法に基づく複製の趣旨を明らかにした上で頒布している。

    明治期出版物保存およびマイクロ化の輪を広げようと、他図書館とも話し合いを持ち、現在努力中なので、近々、他の図書館所蔵分の1ユニットが出来る可能性もある。明治時代の資料を持っている多くの図書館が協力しあい、出来る限り網羅的、かつ均質のマイクロフィッシュ化がなされるよう願っている。

    最後に早稲田大学所蔵明治期本の特徴をあげてみると、異版資料が非常に多いということである。例えば「新體詩歌」竹内隆信編23種、「天地有情」土井晩翠著9種、「暁鐘」土井晩翠著6種、「新曲浦島」坪内逍遙著3種、等があげられる。これは、個人蒐集家が集めたいくつもの個人文庫を所蔵しているためである。多くの異版を比べてみることにより、個々の本の成り立ち、時代背景、売れ行き、著者の作品への思い入れ等がじかに伝わってくる。また「文庫」中の図書には、所蔵者や読者の書き込みがあり、マイクロ資料として一般に公開されることにより、今後は研究者にとって貴重な研究資料として役立つものになると思われる。

保存箱 異版資料



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