ふみくら:早稲田大学図書館報No.16(1989.1.25) p.19

新収資料紹介15

インキュナブラの代表作『二ュルンベルク年代記』

洋書係

 本書はニュルンベルクの人文主義者ハルトマン・シェーデルが、同時代のフィリッポ・ディ・ベルガモの『年代記補遺』やヴェルナー・ロ一レフィンクの『古代年代記集』成等に基づき、天地創造から15世紀に至る世界史を、アウグスティヌス以来の伝統的時代区分によってラテン語で書き上げたものである。(なお、本書には同年12月に刊行されたドイツ語版がある。)
 印刷・刊行者は、15世紀後半グーテンベルク以降の印刷術初期の時代にあっては最大の企業家と見なされているアントン・コーベルガーである。彼の代表作として知られる本書は、15世紀刊本(インキュナブラ・揺籃期本)の最大のベスト・セラ一のひとつとされており、書物文化史上重要な位置を占めている。
 ドイツ最初の学問的意義を持つ世界史とされる本書には総計1,809枚に及ぶ木版の挿絵が見られるが、これらはA・デューラーの師ミヒャエル・ヴォルゲムートとその継子ヴィルヘルム・プライデンヴルフの手によるもの。頁数も600頁を超えるフォリオ判大冊の本書は、木版装飾画のあるインキュナブラ中最も重要かつ豪華なものとされ、美術史的にも価値が高いものである。当時の世界認識を反映する世界地図と共に、印刷された中央ヨーロッパの地図としては最古のものと推定される地図が見開き2頁で掲げられている。
 海外の有名図書館は大方、本書を1部ないし数部所蔵しているが、我が国では東大総合図書館(ラテン語版)、天理図書館(ラテン、ドイツ両版)、京都外語大図書館(ラテン語版)等が所蔵している。当館が入手した1部はイギリスの科学者ヘンリー・カヴェンディッシュの旧蔵書である。
 この種の資料を殆ど所蔵していない当館の欠を補って行く上で、まず第一にふさわしいものと言える。


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Archived Web,December 21, 1999