ふみくら:早稲田大学図書館報No.12(1987.10.26) p.12

館蔵特殊コレクション摘報5(1)

小 寺 文 庫



印
  1. 分 類 ZH1−25

  2. 収蔵数 洋書 30,536部 36,570冊

  3. 目録等
    印刷目録:なし
    その他:洋書著者名目録(冊子・第2−4篇中、カード)・洋書件名目録(カード)

  4. 収蔵(設置)年とその経緯
    大正13年か
     兵庫県の富豪であり、政治家であった小寺謙吉が、関東大震災によって東大図書館をはじめ公私立大学の書庫が焼失したのを措しみ、東大・慶応・法政・中央等の各大学に本を寄贈した。その時、かねてから大隈候と政治的交遊があったこと、また、校友水野正巳(大山郁夫義兄)の計らい等によって本学へも寄贈されることになった。最初に寄贈を受けたのは図書館の事務日誌によれば震災直後の大正12年11月のことである。この時は約100冊と記されているが、以後何回かにわたって寄贈され、大正12年度図書館報告には、その年度の大部図書寄贈者7名中の1人として「小寺謙吉洋書2,506部2,782冊」とある。この数字については諸説あり疑問もあるが、ともあれこの年以降継続的に寄贈を受け、最終年は昭和21年秋と伝えられ、総数3万7千弱に達した。実に20年余の長きに及ぶこの寄贈書により本館洋書部門を充実することが出来た。その厚意を謝し、記念のため寄贈本を一括して「小寺文庫」と名付けた。

  5. 収書の特徴
    社会科学全般にわたる洋書。特に政治部門が多く、法律・経済と合わせて6割余を占めるが、歴史・伝記・地理関係も多く、哲学・宗教に関するものも少なくない。これらは小寺謙吉自身の選書によるもので、すべてがよく吟味されており、基本的なものを網羅している。本館洋書部門の中核をなし、質・量共にその恩恵を蒙ること多大である。

    小磯良平画「小寺謙吉肖像」 第一閲覧室
  6. 収書者
    小寺謙吉:神戸生。明治10年(1877)4月14日生、昭和24年(1949)9月27日没。兵庫県の富豪・大地主、政治家、神戸市長、早稲田大学校賓。旧三田藩士小寺泰次郎の長男。明治29年杉浦重剛の「称好塾」に学んだのち明治30年渡米。コロンビアン大学で法律を、ジョンスホプキンス大学大学院で政治学を学び、更にハイデルペルグ、ウィーン、ジュネーブ各大学で政治・法律学を修めた。帰朝後、衆議院議員、神戸市会議員等政界で活躍したが、のち政界をはなれ、昭和12年コデラ工業所をおこし、内燃機関の研究に専心,昭和13年浪速工業社長となり、また岩木金山を経営、戦後新日本新聞社社長となった。昭和22年神戸市長に選出され、昭和24年現職のまま急死した。政治家、実業家として活躍した人であるが、読書の趣味が深く、鑑識眼が高かった。また明治35年三田中学校(現三田学園高佼)を創設し、営利をはなれ、独自に健全な教育を行なわんと志した人でもあった。
    参照:
     早稲田学報 349号 大正13年3月

       同   復刊3巻10号 昭和24年10月

     小寺謙吉先生小伝 同委員会編 三田学園 昭和37年10月刊

     小寺文庫のこと 青木枝朗(新鐘 14号 1961年ll月)

     同 ふたたび 青木枝朗(蔦 4号 1978年9月)

     早稲田大学図書館八十年の回顧と百年への展望(早稲田大学図書館紀要 4号 昭和37年)

     庶務係主事日誌 大正12年9月以降(早稲田大学図書館事務関係書類)

     図書館報告 大正12年度(早稲田大学図書館事務関係書類)



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